百貨店業界、小売業界だけでなく、国内産業はすべて少子高齢化に対応していかなければなりません。国内市場は少しずつ縮小していきます。これは何の業界であれ、みんな同様だと思います。だから国内でどんどん規模を拡大していくということは、その時の経済情勢とミスマッチしていくのではないでしょうか。
また少子高齢化の影響で、市場規模の縮小だけではなく、当然、ライフスタイルも急激に変わってきます。ですから変化に対応していくということが、国内のあらゆる産業において企業が生き残っていく上での一番の命題になっていくと思います。特に百貨店であれば、まさに死活問題です。その課題に対して着実に克服していくということが、最も重要なことなのです。
それと同時に、企業が成長していく“芽”をどこで育てていくのかということを考えなければなりません。そのひとつとして、アジアにおける事業開発にそれを求めようと計画しています。今シンガポールと台北に二つの店舗を展開しておりますが、今後は中国、あるいはシンガポールの周辺諸国などに視野を広げて事業を拡充していきたいと思っています。
さらに、アジアの経営資源と日本国内の経営資源を将来的にどう融合させていくかということが、髙島屋の発展につながっていくのです。
では、国内では何を行うべきか。私は大阪店、京都店、東京店、横浜店、新宿店という直営大型店の営業力を強化していくことを最重要課題としています。大型店をたくさん抱えていることは髙島屋の強みだと捉えられがちですが、私はむしろそれが弱みになることもあると考えています。
経営資源を一カ所に集中できず、大型店に分散してしまうからです。大型店であっても、その地域の一番店でなければその店の営業力を見直さなければなりません。
特に日本全体では人口は減少していますが、都心は逆ドーナツ減少でむしろ増えている傾向にあるので、都市部にある大型店は重要な存在になります。
百貨店業界のことも申し上げておきましょう。これまでに、大丸と松坂屋、三越と伊勢丹といった百貨店の再編・統合が起こりました。これは百貨店・GMSなど小売店の経営者が、市場の縮小や質的な変化に対する、危機感を持っていることの現われです。こうした中、髙島屋も2008年10月に、エイチ・ツー・オー リテイリングと経営統合を目標とした業務提携と資本提携に合意しました。当社とエイチ・ツー・オー リテイリングの経営資源・ノウハウを共有化し、相互活用することで、シナジー効果を高めていきます。