新人時代の所長と設計事務所の監理者の方、このお二人からは、プロジェクトを進めていくときに、いかに準備が大切かということを学びました。計画と準備に充分な時間をかけることで、その後の時間を最大効率化できる。これは現場のマネジメントにおいて不可欠な考え方です。人とモノを組み合わせて、限られた時間とコストの中で安全や環境に十分配慮しながら、どういういうマネジメントを行っていくかが重要です。それがうまくいってはじめて、素晴らしい建物が出来上がるのです。
もちろん、失敗もいろいろありました。現場で責任ある仕事を任されるようになり、知らず知らずに自分の能力を過信するようになっていた時のことです。何とかなると思って二つの仕事を同時に追いかけ、結局両方とも工事ができなくなってしまうという経験をしました。事前に熟考し、スケジュールを組み立ててみれば、両方を同時期に行うのは無理なことはすぐにわかったはずでした。どちらかひとつに決めておく、あるいは両方手を引くという決断を私は下さなくてはならなかった。
しかし、それをせずにズルズルと優柔不断なままでいてしまった結果、抜き差しならない状態に陥ってしまったのです。この時は、とにかく何度も相手先に足を運び、平身低頭謝り、お詫びを申し上げ続けるしかありませんでした。自分の読みの甘さが、どれほど相手先に大きな迷惑をかけてしまったかを猛省し、お客様に誠意を尽くすということはどういうことか、初心に戻って自分の仕事のやり方を、一から組み立て直しました。
ひとつひとつの仕事をしっかりとこなしていくことで信頼が得られ、結果として評価が得られる。現場で積み重ねるこうした経験が土壌となり、失敗が財産となって、今に活かされていると思っています。